【ウェブ小説】はじめてのまちあわせ。【前編】(一歌視点)

ec_sorapuro1 ウェブ小説

「いってきまーす!」

 玄関を出た瞬間、ふわりと、やわらかな風が前髪をなでた。
 まぶしさにさそわれて見上げると、気持ちのいい青空が広がっている。

(わぁ、きれい!)

 そう思うと同時に……あの曲が、頭の中で響きだす。

 はずむような明るいピアノの音。
 さわやかなアップテンポのリズム。

 ――世界を変える、たったひとつの音楽。

「♪~~」

 自然と鼻歌をかなでながら、軽やかに街を歩く。

 目に入るものすべてがまぶしい。

 ポカポカとふりそそぐおひさまの光。
 道ばたに咲く、色とりどりの花。
 行き交う人たちの服も、心なしか明るい色に見える。

 (春だなぁ……)

 しみじみ感じながら、大きく深呼吸。

 ――小学校の卒業式から、もう一週間が経った。

 あれから、けっこう、いろいろなことがあったんだ。

 まず、親友のユキちゃんが髪を切った。
「中学生になるんだから、気合い入れないと!」とか言って、トレードマークだったポニーテールを、肩の上くらいまでバッサリ。
 大人っぽくなって、すごくかわいいの。

 それから、ユキちゃんと、友だちのリリアちゃんとの三人で、はじめてシブヤに行った。
 リリアちゃんは慣れてるみたいであちこち案内してくれたんだけど、人がすんごく多いし、おしゃれな人がいっぱいいるし、なんだか目が回っちゃった。

 あとは、わたしが所属してる音楽創作サークル『ソライロ』のオンライン会議をしたり。
 ソライロのメンバーのコウスケ先輩とりーちゃんと、カラオケに行ったり。

 毎日、大好きなみんなと過ごして、たくさん笑って。

 そして。

 そして、今日は――。

コメント

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