【ウェブ小説】はじめてのまちあわせ。【前編】(一歌視点)

ec_sorapuro1 ウェブ小説

 ピロリーン♪

 ふいに、ポケットの中で携帯が鳴った。
 わたしは横断歩道の前で足を止めて、携帯をとりだす。

アオイ『もう晴天駅まで来た?』

 えっ、と思いつつも、すぐに返信。

いっちー『もう着くところだよ!』

 この横断歩道をわたれば、そこが晴天駅の駅前広場だ。

(……でも、なんでそんなこと聞くんだろう?)

 待ち合わせの場所は、東京の沢袋駅だし……。
 あ、もしかして、なにかトラブルがあって遅刻しそうなのかな?

 アレコレ考えてたら、また、「ピロリーン♪」とお知らせ音。

アオイ『ごめん。気がついたら、来てた』

 え?
 一瞬、どういう意味かまったくわからなかった。
 しばらく考えこんで……ハッと、顔を上げる。

(……まさか)

 どきん、と心臓が脈打つ。

 信号は青。
 わたしはいそいで横断歩道をわたり、広場へむかう。

 キョロキョロしながら、歩いていく――と。

(あ……!)

 日曜日の、駅前広場。
 お出かけをする家族連れが目立つ中、その人は、ひとりでしずかにたたずんでいた。

 すらりと背の高いシルエットに、首からさげたブルーのヘッドホン。
 色素の薄い茶色の髪が、風にサラサラと流れる。

 ――「あの人」が、そこにいた。

 

 (【後編】へつづく)

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コメント

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