ピロリーン♪
ふいに、ポケットの中で携帯が鳴った。
わたしは横断歩道の前で足を止めて、携帯をとりだす。
アオイ『もう晴天駅まで来た?』
えっ、と思いつつも、すぐに返信。
いっちー『もう着くところだよ!』
この横断歩道をわたれば、そこが晴天駅の駅前広場だ。
(……でも、なんでそんなこと聞くんだろう?)
待ち合わせの場所は、東京の沢袋駅だし……。
あ、もしかして、なにかトラブルがあって遅刻しそうなのかな?
アレコレ考えてたら、また、「ピロリーン♪」とお知らせ音。
アオイ『ごめん。気がついたら、来てた』
え?
一瞬、どういう意味かまったくわからなかった。
しばらく考えこんで……ハッと、顔を上げる。
(……まさか)
どきん、と心臓が脈打つ。
信号は青。
わたしはいそいで横断歩道をわたり、広場へむかう。
キョロキョロしながら、歩いていく――と。
(あ……!)
日曜日の、駅前広場。
お出かけをする家族連れが目立つ中、その人は、ひとりでしずかにたたずんでいた。
すらりと背の高いシルエットに、首からさげたブルーのヘッドホン。
色素の薄い茶色の髪が、風にサラサラと流れる。
――「あの人」が、そこにいた。
(【後編】へつづく)
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