【ウェブ小説】はじめてのまちあわせ。【後編】(一歌視点)

ec_sorapuro1 ウェブ小説

(……とは言っても、やっぱり、まだぜんぜん実感がないや……)

 メッセージのやりとりはしてたけど、会うのは、卒業式の日以来なの。
 奏太くんは、卒業式の日に東京に引っ越してしまったから。

 ……だから、「東京で待ち合わせよう」って話になったのに。

(なんで……なんでうちの駅にいるの……っ!?)

 ドキドキはずむ心臓をおさえながら、そっと、うしろをふりかえる。

 彼は、まだわたしに気づいていないみたい。
 街路樹にもたれかかって、ぼんやりと空を見上げてる。
 そんな、なにげない横顔も絵になってしまうくらい、かっこいい。

 ……なんで、あんなにかっこいいんだろう。

(それにくらべて、わたしなんて……)

 モヤッとわきあがる後ろ向きな気持ち。
 いっそ逃げだしてしまいたい衝動が、すこしだけ胸にわきあがる。

(でも……!)

 くちびるを、ギュッとかみしめる。

 さっきから緊張で心臓が痛いし、自信も勇気もぜんぜんない。

 だけど……。
 彼を見た瞬間から、気持ちが止まらないんだ。

 こっちを見てほしい。
 おしゃべりしたい。
 どんな顔で笑ってくれるかな?
 おしゃれしたの、気づいてくれるかな?

 ぜんぶぜんぶ、会わなきゃ、かなわない。
 立ち止まっていても、なにもはじまらない。

(………よし!)

 わたしは意を決して、歩きだした。

 大好きなあの曲が頭にひびく。
 わたしを、前へ、前へと連れて行ってくれる、あのメロディー。

 どきん、どきん

 鼓動がぐんぐんスピードをあげる。
 彼の姿が、どんどん近くなる。

 あと2メートル……1メートル……!

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