「さ……しょ、奏太くんっ!」
(…………)
……わ~っ!
噛んじゃった!
ガバッと両手で顔をおおう。
(つい今までのクセで、「冴木くん」って呼びそうになっちゃったせいだよ……!)
卒業式の日から、メッセージのなかでは、わたしは「奏太くん」って呼んで、彼は「一歌」って呼んでくれてるけど。
実際に顔を見てそう呼んだことは、卒業式のときの、一回だけだから……!
ものすごくはずかしくて、顔を真っ赤にしてうつむいていると。
「……おはよ」
彼はそっと首をかたむけて、わたしの顔をのぞきこんだ。
「ゴメン。待ちきれなくて、むかえにきちゃった。びっくりしたよね」
ちょっぴり眠たそうな目と、フッとちいさくほほえむ口元。
きゅーんと、胸がしめつけられる。
泣きたいくらいのはずかしさと変な緊張は、一瞬でどこかへふきとんで。
かわりに、胸のなかがキラキラした光で満たされていく。
「う、ううん! は、はやく会えて、うれしい……です」
「ホント?」
「ほ、ほんと!」
こくこくうなずくわたし。
奏太くんは、「よかった」と、ホッとしたように笑う。
(わぁ。奏太くんだ……)
たった一週間会えなかっただけなのに、まるで憧れの芸能人に会えたみたいに、気持ちが浮き立つ。
すぐ目の前にいる彼の姿が、声が、なつかしくて。
夢みたい。
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こんにちは。秋元水香です。わたしは時間割男子の大ファンです!次の巻も楽しみにしていますが、お体にも気をつけてください。応援しています!