【ウェブ小説】はじめてのまちあわせ。【後編】(一歌視点)

ec_sorapuro1 ウェブ小説

 

 

「……今日、なんかちがうね」

 ふと、奏太くんがわたしをじっと見て言った。
 すこしかがんだぶん、顔の距離が近づく。

  ドキッ!

 わたしはあわてて目をそらして、ソワソワと前髪をさわる。

「ほ、ほんと!? じつはこの服、ユキちゃんとリリアちゃんに相談にのってもらって選んだの」

 こないだ、ふたりとでかけたとき、選んでもらった洋服。
 今まで着たことない大人っぽい服だから、似合ってるかちょっと不安なんだ。

「ヘ……ヘンじゃないかな?」

 勇気をだして聞いてみた。
 おずおず、顔を上げて彼を見る。

 すると――奏太くんは片手で口元をかくして、目を伏せた。

「……かわいい」

 ボソッと、ちいさな声。
 ワンテンポおくれて、わたしはビクッと肩をはねあげる。

(へっ!? い、今……「かわいい」って言った!?)

  ぼんっ

 顔がバクハツする。

「っ……」

 うれしすぎて、声にならない。
 両手で顔をおおって、身もだえする。

(よかった……この服着てきて……!)

 あんなに気になってた前髪が、一瞬でどうでもよくなった。

 ドキドキとスピードを上げる胸の鼓動を聞きつつ、ユキちゃんとリリアちゃんに心のなかで感謝する。

「…………」
「…………」

 なんとなく、気恥ずかしくて。
 ふたりしてだまりこむわたしたち。

 聞きたいことも、話したいこともたくさんあるのに、声が出てこない。
 このままだと、わたし、一生ここからうごけないかも。

 そんな風に思ったとき、奏太くんが口をひらいた。

「いこっか――……一歌」

 顔を上げると、茶色い瞳と目が合う。

 ちょっぴり照れたようにはにかむ彼。
 そっと、さしだされた右手。

「……うんっ!」

 ――きっと、一生忘れない。

 ふたりがつきあって、はじめての待ち合わせ。

(おわり)

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